〜 雑誌 〜 作者:NAIDEN
左手親指の汗が、雑誌のインクをとかす。
活字の色に染められたその指は、微かに疲れを覚えた。
虹色に反射する光より、
黒と白だけをとらえて。
本は僕に物事の輪郭だけをとらえて語る。
それは知識の翼であり、
儚くも夢の世界より墜落したファンタジーの残骸でもある。
雑誌が語る幻想は、
必ず人が話しかけてくるように聞こえないか?
僕が持っているブ厚い紙の束は重力に引っ張られ
それに押し返すように両手でそれを支え続け、
僕が感じているのは、重力か?
世界の・・・重さか。
時間の断片を糊で貼り付けただけのそれは
例え焼け尽きた絶望感の真っ只中にある
僕の心にすら、同じように語りかける。
汗で溶かされたインクが指に染み込んでいくように
心のバリアに包まれた本心をも
容易に見透かして入り込んでくる。
僕の焼け尽きた絶望感を見て
僕の乾きを悟ったそれは。
渇きを知らない僕に乾きを教え
それに応えるかの如く
ゆっくりと、僕に知識という水を差し出し
慈善的な態度と
慈善的な雰囲気と
慈善的な口調で
献身的に、開いたページの文章を静に語り始める。
決してうるさくなく
川の流れるように。
活字が例え僕の指の汗で溶かされても
かわらずに
優しく、滑らかに。
僕の部屋には、誰もいない。
「僕は誰と、話しているのか?」
誰も、応えない。
その部屋には、一人の二十代男性と、一冊の雑誌と
その男が掛ける為の椅子があるだけでした。
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